その手はあたしの頬に触れて―――。


―――本当に一瞬。


でも確かに、あたしの唇が、涼太の唇と重なった。


「…ふっ、目くらい閉じろよ」


まだ顔がくっつきそうな程の距離で、涼太が笑ってる。


「…ぁ…あぁ…、…ごめん」

「ご褒美ありがとっ!これで明日も頑張れるわっ!じゃーな!」

「…ぁ…あぁ…。…うん……」


手を振って帰って行く涼太に、あたしも手を振り返した。

――いつもならこんなこと、しないのに。