十六夜桜〜全ては愛から始まった〜





私の体が血を欲しているかのようだった。




ガラスの破片を取り、襦袢でそっと手を包んだ。




瞬く間に真っ赤に染まっていく襦袢。




菜の花の顔など忘れていた。




ただただ、口にこの真赤な蜜の様な血を含みたい。



それだけだった。




「菜の花。もうよい!下がれ!」



菜の花を追い出すと、襦袢に染み付いた血の香りを確かめた。




「これだ」



香りの正体は紛れもなく血だった。



私はゆっくり襦袢を口まで運んだ。








染みついた血液の味がぶぁっと広がった。