「姐さん」




「これ」





菜の花の目の前に割れたビードロを出した。






「割れてしもうたさかいほかしてくれなはれ」

(ほかす=捨てる)





菜の花はうつむいたままだった。





「何を考えておる。用はそれだけじゃ。」







これを割ったのは菜の花。





でも、問い詰めなかった。





菜の花は割れたビードロの欠片をひとつずつ和紙に並べた。







「姐さん…。すんまへん。ビードロ割ったのあっしです。」






涙を目にいっぱい溜めて私を見つめた。