「伊東様。お時間ですので、失礼するでありんす」 眠っている伊東様に一言声をかけ退室した。 「中岡様またお出でくださんし」 襖を明けると、長い廊下に朝陽が射し込み私を出迎えているようだ。 部屋に戻ると、煙管に火を付け硝子でできた鉢のなかにいる真っ赤な二匹の金魚を見つめた。 この金魚たちも"廓の鳥"死ぬまでこの中からは出られない。 けど、金魚はわかっていない。 私の着物の袖の柄をエサだと思い口をパクパクさせる。 無性に悲しくなった。