1857年。



世は幕末。




僕は血がべっとりと付いた小刀を握りしめ、一生懸命走っていた。



息が上がる。




藪を抜け、坂を登るとそこには大きな桜の木があった。




僕は、見とれた。




月明かりに照らされ、まるで花びらが生きているようだった。




10歳の俺でも見とれたんだからそりゃあすごかったんだろう。





一歩ずつ、ゆっくりと桜の木に近づく。




すると、いきなり勢いよく風が吹いた。





ーぶわぁぁぁぁぁー




桜が舞う。
嵐の様に。




僕は、袖で目と口を覆った。




風がおさまったようだった。




ゆっくりと目を開ける。




そこには、俺より少し下位で黒髪の少女が立っていた。