「ハァ…ハァ」
―302号室―
アタシは病室の前で立ち止まった。
どうか…現実じゃないように。
アタシは心の何処かでそう願っていたんだ。
アタシは意を決して病室の中に足を踏み入れた。


「……」
そこには、医者と看護師、美香梨の両親がいた。

「…!!恵ちゃんっ!!」

―ドクン―

美香梨のお母さんはアタシの存在に気付きアタシの名前を呼んだ。
「朝来たら、美香梨の顔色が悪くて…」

―ドクン―

「私が何度呼びかけても返事をしなくて…そしたら、いきなり大量の血を吐いたの……」

―ドクン―
何度も何度もアタシの心臓が大きく脈打っていた。
状況を説明する美香梨のお母さんの声さえアタシには届かなかった。

ゆっくりと美香梨に近づく。
「!?恵さん!危ないから離れていなさい!」
アタシに気付いた医者がアタシを引き止める。

そんな医者をよそに、アタシは美香梨の頬に触れた。
―ピピ―
その時…
それまで下がり続けていた美香梨の血圧は正常に戻り、心臓の音も落ち着いた。
「「!?」」
医者さえも驚いていた。
アタシの手は小刻みに震えていた。

「ねぇ…美香梨…?」
アタシは美香梨に呼びかけた。

―ビクッ―
それまで何も反応が無かった美香梨の手が動いた。

そして、
「めぐ…ち…ゃん…」
美香梨はうっすらと目を開けた。