「……」
あれ…?
痛みがない…?
一瞬にして死んじゃったのかな…?

アタシはきつく閉じていた目をかすかに開いた。

―!!―
「嘘…でしょ…?」
アタシは…涼介のかえり血を浴びていた。
今…アタシの目の前で何が起こってるの?

涼介はアタシをかばうように抱き締めて倒れ込んでいた。
背中にはざっくりとナイフが刺さっている。

「ねぇ…涼介…?」
「め…ぐ…」
アタシが揺さ振ると涼介は幸運にもかすかに息をしていた。
「ナイフ…抜い…てくれるか…?」
アタシは静かに頷き、涙ながらも涼介の背中に刺さっているナイフを抜いた。
「う゛!!!」

抜いたと同時に血が一気に吹き出した。
「荒瀬…!自分が何やったか分かってんの!?」

アタシは涼介を抱き締め、アユリを睨んだ。
「アタシは…悪くない…悪く…ないもん!!!」

アユリはその言葉だけを残し、走り去った。