もしかして金融関係だろうかと母の蒔いた危険に更に身を硬直させたが、それをも超越した男の言葉に凍りついた。
「そうだろうな。死んだと聞いて飛んできた」
その声は小学生の時に掛かってきた悪戯電話みたいに最初はニコニコ話してて家にひとりだと分かった途端突然レイプするから言う通りにしろといった下品な声じゃなかったけれど、十分過ぎる程に冷たい男特有の恐しい声だった。
お父さんが轢いた人の関係者だ、きっと殺されるとすぐさま直感で悟った。再放送の刑事ドラマで被害者の身内が犯人とその関係者を殺す場面が頭の中をぐるぐる回り始めて、逃げなきゃと思うのに全身は硬直を増す一方で身動きが出来ない。