「ありがとうございますッ…」
小さく頭を下げると、「いいえ。」とだけ言って板書を始めた。
その姿を見て私も同じように板書を始めた。
キーンコーンカーンコーン
終わりの鐘が鳴る。
私は教科書を閉じ頭を下げながら「ありがとうございます。」とまたお礼の言葉を述べた。
「別にいいよ。
えっと、妃芽ちゃんだっけ?」
「妃芽、でいいです。」
「そっか。
私は長浜梨桜(ナガハマリオ)っていうの。」
「長浜って…長浜呉服店の?」
「えぇ、そうよ。」
長浜呉服店とは、由緒正しき日本でも有名な呉服店だ。
今年で創業160周年。
私の家の着物すべて長浜呉服店のもの。


