皆がサッと席に戻る。
まだ鐘は鳴っていない。
頭にハテナマークを浮かべていると先生がやってきた。
「よし、今日は24ページから始めるぞ!
教科書とノートを開け!」
その先生の掛け声に、あることに気付いた。
…教科書、がない。
誰かに借りようにも友達はいないし、凌雅と席は離れている。
どうしようかと辺りを見回すと隣の席の子が机をくっつけてきた。
「教科書ないんでしょ?」
艶のある長い黒髪を耳にかけ、そう私にだけ聞こえる声で言う。
チラッと見えた顔に、女の私でさえも胸が高鳴った。
長い睫。
二重で大きな黒い瞳。
健康的で美しい肌。
日本人的なお顔立ちだ。


