「何か食いたいものとかは?」
「フルーツ…。」
「ん、わかった。」
少しだけ笑顔を見せて頷いた。
サラサラな髪が陽に透けて、小さく揺れた。
「まぁ、なるべく早く治せよ。」
その言葉と共に、部屋から出て行った。
キィ…、と扉の閉まる音が部屋に響く。
急に寂しさが押し寄せて、気分が落ち込んでしまった。
…凌雅は、他の何かを言おうとしていた気がする。
その何かは、わからないけれど。
数分後、フルーツの盛り合わせをメイドさんが持ってきてくれた。
私は不思議に思わなかった。
なぜそんなに急ぐのか。
“早く”治すことにこだわるのか。
聞けばよかった。
不思議に思えばよかった。
もしも聞いていたら私は、早く治そうと努力しただろうか。


