立ったまま見下ろしながら、膨れっ面をした私を、 拓真は自分の方へと引っ張った。 「そうじゃないよ。オレだって、不安なんだよ。陽菜子が側にいないと」 「た、拓真…?」 そう言って、私を抱きしめた。 波の音と、汽笛の音。 それくらいしか聞こえないこの浜辺は、夏の爽やかな夜風を運んでくれる。 「久しぶりだな。こうやって二人きりなのは…」