借金取りがいなくなってから、高山家に一応の平穏が訪れた
それはただ静かに何もない生活が戻ってきただけで、あたしにとってこの場所は平穏でも何でもない




愛人のお陰で家が助かっても素直に感謝なんかできるわけない

心の中は憎しみや悲しみで一杯





それでも、あたしは生きている
終らせる勇気がなかったんだ
そんな弱い自分にも嫌気がさす




何をどうすべきか分からないまま
また何くわぬ顔で学校に行く毎日が始まった






「加奈ぁもう来ないかと思ったよぉ。心配したんだからぁ」


久しぶりに学校に行くと美幸が飛び付いてきた





「ごめんね、ちょっといろいろあってさ」





友達でも、言えない
ごめんね、美幸





「何があったの?」



「いろいろだよ。もう大丈夫だから」




笑え加奈
笑って乗りきれ





「そっか…何か悩みあったら言ってよ?」



「うん、ありがとね」





笑って席についた



美幸は思いの外、突っ込まずにいてくれた

あたしが自分のことペラペラ話す人じゃないと
長い付き合いの中で分かっているからかもしれない