「喉乾いたー」
台所も昔と全然
変わってなかった。
兄がシールをベタベタに
貼った冷蔵庫。
私が落書きした食器棚。
・・まだ使ってんだ。
冷蔵庫から麦茶を出して
そっとコップに注ぐ。
「なーーーーーお!!」
父が呼びながら台所に入ってきた。
・・この歳でよく大声でるな。
「なに?」
「お前の部屋!掃除しといたから
キレイだからな!」
・・・
・・それを言うためにわざわざ。
私は麦茶を一気に飲んだ。
・・・
「お父さん、ありがとね」
「あ、ああ!」
父のとびきりの笑顔。
麦茶はなつかしい味だった。
・・そんなこんなで私は
今日からまた
この家で、この町で
暮らすことになったのだ。


