色に香りに摩訶不思議




「鴇田さん、こっちの準備はできたよ」

「サルマタってジジくさいから……あたしはトランクスの方が好きなの」

 ボクは機材の調整を終わらせ、もう、いつでも収録可能な状態を作り上げていた。

「ハサマ君、ちょっと待って。くしゃみ出そうなの」

「ブリーフって子供っぽいし……あたしはトランクスの方がイイの」

 鴇田倫子さんも発声練習が済んだらしいのだが、出そうで出ないくしゃみにヤキモキしている様子だった。

「はっくちゅん!! あ……鼻垂れてきちゃった」

「鴇田さん、鴇田さん……マイクに向かってくしゃみしちゃダメじゃんか、もう……」

「ハサマ君、ごめんなさい。耳、痛かった?」

「コンプがリミッターになっててさ、くしゃみの大きな音も瞬時に縮小されたから大丈夫だけど……マイクが傷んじゃうから、マイクに向かってくしゃみしちゃダメなんだってばさ」

「トランクスって若々しいから……あたしはハサマ君の香りがするトランクスをはきたいみたいな……」

 コンプレッサーと呼ばれる機器、これを上手に設定できたなら、大音響のくしゃみも、ヒソヒソ内緒ばなしも、どちらも聴き易い音量にできるから不思議だ。