[5月12日 ユリの日記]


「キモイ」

って言葉が聞こえると、体が勝手に反応してしまう。


良かった…。

あたしに向けられてる言葉じゃない。

そう確認して、ほっとする。

今日もそんな瞬間があった。


クラスでその言葉が聞こえて来たとき、
それが向けられているのは大抵はあの子。

政子ちゃん。

いつも机の上にとんがりコーン並べて、
ミニカーをドラフト走行させてニヤニヤしてるあの

ダサ子ちゃん。


本当にキモい。

あの顔、髪型、笑い方、

彼女を構成する全てのものが醜いって感じ。

そして、それは誰かによく似てる。



そう、あたし。


中学校時代のあたし。

だからきっとこんなにダサ子を拒絶してしまうんだろう。

認めたくはないけど、ダサ子をみるたびに彼女の陰に昔のあたしが映し出されることは、紛れもない事実みたい。


どう追い出そうとしてもつきまとってくる。

最悪だ。

ダサ子みたいにだけは、死んでもなりたくない。