「また、俺がなかしちゃったかー」



まいったな、と困ったように笑う。




「ち、違うよ。私が勝手にっ――」



否定の言葉は


ちゅ、


一ノ瀬奏の唇で塞がれた。



「ちょ、ちょっと」


慌てて離れたけど


顔は真っ赤


おまけに


一ノ瀬奏は


「ん?」なんて


涼しそうな顔をするから



何も言えなくなる。


私の反応を見て


遊んでんのか、なんなのか。


なのに、さっきまでとは違って。



「俺はさ、」


急に真剣な顔になって


こっちを見るから


どうしていいのか分からない。


カッコ良すぎて困る。


「なに?」


「俺が、好きなのは柚子だから。」



ぼっ。


急にそんな事を言われて


私はどうすりゃいいわけ



「ふっ、ふーん」


恥ずかしさを取り繕うために


私はまた可愛くない返事をした。



だけど、


隠せる訳はなくて



「ぶははっ、照れてやんの」



一ノ瀬奏では、ケラケラ笑って



うらうら、と私の鼻をつまんだ。



「うわっ、やめろー」