その少女は、いつも幸せに満ちていた。
華やかな笑顔で、人々を魅了していた。
しかしその幸せは、ひょんなことから哀しみの色へと変わっていった。
ある日、自分に弟が出来ることになったのだ。
最初はとても喜んでいた彼女だったが、彼女の悲劇はもう、この瞬間(とき)から始まっていた。
弟が出来たことで、彼女は少しずつ家族の中から浮いた存在になったのだ。
歳の離れた弟は、今までの彼女の居場所をことごとく奪っていった。
そしてついに、彼女は狂ってしまった。
彼女は家族の目が自分に向かない寂しさと、幼い悪魔(おとうと)への復讐心から、自分の世界を作り出していった。
邪魔者の居ない、幸せだったあの頃のような幻想的な世界を。
しかし、そこには、自分の家族は居なかった。
彼女は家族を、「自分を棄てたもの」として認識し、家族の存在を消したのだった。
その世界の中でだけ、彼女は本当に幸せそうに笑うことが出来た。
哀しみなど影を落とすはずもなく、不安などはあるはずがなかった。
しかし、彼女の世界の幸せは、また崩れていった。
自分だけの世界に閉じこもるうちに、幼い悪魔はいつの間にか成長していたのだ。
悪魔がまた、彼女の世界を壊していく。