思わず拓人の顔を見ると、笑ってなんかいなかった。
「一緒に……って、南米?やだよ。無理だよ、俺弱いもん、基本的に」
冗談にしてしまうべきだと判断したので、おちゃらけて見せる。俺が海外でなんてやっていけるわけない。
「いや、晶が行きたい所あるって言うならそこにするよ」
「な…何言ってんの。マジ?お前さてはゲイなの?俺に惚れた?よしてよ、俺女の子にしか興味ないんだから」
「……じゃぁ、なんでいつもそんな顔してるんだ?」
「え……?」
拓人が立ち上がった。
何か怒っているみたいだった。
「見たいもの、無いのか?したい事、ないのか?どうしてだ?できるわけないって決め付けてるのか?就職の話した時だって、どうしてあんなに卑屈に言うんだよ。胸張れよ。ちゃんと自分を見ろよ」
俺はかっとして、自分より10センチは身長の高い拓人の胸倉をつかんでいた。
「……っお前に何がわかるんだよ!そのでかい手でなんでもつかんできたんだろ!」
拓人は動じなかった。俺から目をそらさなかった。
「わかるから苛々するんだよ。お前言ったよな?“しんどい事が無いのがしんどい”って。そんなの、痛いくらいにわかるんだよ。でもそんなの、自分が何かしなきゃ苦しいまんまなんだ。お前はそれわかってて立ち止まったままなんだ。それどころか目ェ閉じてるじゃねぇか!」
なんだかぐちゃぐちゃだった。俺は彼の視線に負けて、手を離す。
「どうしろって言うんだよ?これから就職蹴って自分探しか?今時そんなの流行んねぇよ。何でも中途半端なの……わかってんだ……わかってんだよ……お前とは違うんだよ。お前みたいに大人にもなれないし、大胆にもなれない。立ち止まってんのが楽だって知ってんだ」

