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「まぁな。あん時はびっくりしたよ。お前海外でもあんなやり方で人とうまくやってんだろ」

「いやいや……日本以外は危険だからなぁ。晶が親切だっただけだって。こんな得体の知れない男を置いてくれて」


拓人がかしこまって言うので、居住まいをわざとくずして冗談めかした。


「世話してもらったのは俺のほうじゃん?」

「あぁ…そうだな。晶、俺みたいな彼女つくれよ」

「気持ち悪ぃこと言うな」


ひとしきり笑ったあと、黙り込んだ。

明日、か……。

もうあと何時間ってトコだな。

何かが胸にこみあげるのを感じた。
拓人と顔を突き合わせていると胸の奥で何が燃えるような感覚がする。


「どこ行くんだ?」

「南米かなぁ」

「なんだよ、結局あったかい地域じゃんか」


笑って立ち上がった。
食器を片付ける。
俺は何度、拓人と向き合って話しただろうか。


「―――晶」


声色が、いつもと違う気がして、俺は返事をしなかった。
拓人は明日いなくなるんだろ?
じゃあ、余計なこと言うなよ。元に戻るだけだ。

お前がいなくなることで、

俺はこんなに安心してるって知ったら、

お前、悲しむ?


「晶」

「……なんだよ……」


振り返らなかった。
お前に感謝なんかしてない。
疑問なんか持ちたくなかった。

なんにも知らないふりして、こんなもんだって訳知り顔でいられれば俺は満足だったんだ。


「……晶。お前、一緒に来る?」

「-―――は……?」