「本当にしんどいことなんか無いことが、しんどい」
拓人の目はいつもまっすぐ物をみる。そしていつも、何かに対しての覚悟がある。
今も、俺から目をそらさずにいた。
「晶」
何か言いかける。俺はそれをさえぎるように背中を向けた。
「帰るよ。仕事、頑張れよ」
ああ、いつも俺は拓人に背を向けてばかりいる。
彼はそれに気付いているんだろう。
何を思うんだ?教えてくれよ。
俺は少し笑った。
きっと教えてくれない、そんな確信に似た何かを感じたから。
拓人、お前は―――いつも何か、俺に、言いたそうなんだよな―――。

