「ちょっと前から思ってんだけど。晶、何かしんどいことでもあるのか?」
「しんどいこと?」
ものすごく真剣な顔の拓人を見て、笑ってしまう。
別にしんどいことなんか無い。
「居候の身で生意気なようだけど、なんでも言ってみればいい。最近顔色が暗いぞ。たった1ヵ月ちょいの付き合いだけど、ここのところの晶は、目に見えて元気がない」
「…………」
どうしてそんなにまっすぐなんだ?
お前、海外で、自分の足で歩いた道で、何を見たんだよ。
俺がどうしても見ることのできないものだろうか。
「しいて言うなら」
俺は立ち上がった。
拓人の前で俺のちっぽけな、からっぽな言葉をつらねるのは我慢ができなかった。

