週が明けて水曜日の夕方。

ナツキが前以て病院に連絡を入れてくれていたお陰で、先生とすんなり会う事ができた。

「看護師からはざっとしか聞いてないから、もう少し詳しく話してもらえるかな。」

「10年前、記憶をなくしてしまった子どもが、こちらの病院に運ばれて来なかったか、覚えてないですか?」

「10年前…ねえ。うーん。この病院に間違いないのかい?」

「…わかりません。」

先生はしばらく腕組みをして考えていた。

「君たちは何でその子どもを探してる訳?」

先生に今までの事を話した。

階段から落ちて入院した事。名字が違う事に気がついて混乱している事。今までになかった記憶が現れ出した事。

「じゃあ、その記憶をなくした子どもが、君かもしれないということなんだね?」

「はい。」

「そうかあ。でもそれなら君の身近にいる人が知ってるだろう?」