自転車で家を出発して一時間。まだそんなに遠くまで来た訳じゃない。やっと国道に出た辺り。

まだまだ先は長いのにもうお尻が痛い。足も筋肉痛になりそう。こんなことなら普段から鍛えておくべきだったと後悔した。

途中、休憩を挟みながら国道を30分位走った時、ナツキの自転車のスピードが落ちた。そしてゆっくりとブレーキをかけて止まった。

「どうしたの?」

「…たぶん、こっち。」

「でも、あの時おじさんは北へ真っ直ぐって…。」

「いや、こっちだ。」

そう言って、その交差点を右に折れた。

何か思い出した…?

そのままナツキの言う通りについて行った。段々と車の量が減り、たまにすれ違ったりする程度だった。

道を歩く人も、自転車に乗る人もいない。それまでは道路沿いに建ち並んでいたお店や会社がなくなり、今は両サイドに畑が広がっている。

そこからはゆっくりと自転車をこいでいった。まるで一つ一つ確認するように。