「そんなの…嘘っぱちだ。」

ナツキの様子がおかしい。ナースコールを押した。

看護師が入って来て、「どうしたんですか、一ノ瀬さん。」と言った言葉に「俺は、一ノ瀬じゃない。」とポツリと言った。

「え?」と聞き返した看護師に叫んだ。

「俺は…高島だ!!」

「!!」

「お父さん、すみません。席を外してもらってもよろしいですか?あなたも一緒に。」

肩で息をするナツキを残して、三人で病室を出た。




談話室に連れて行かれ、色々と話を聞いた。

「実はここに運ばれて来た時にも言ってたんですが、名字が分からなかったみたいなんです。一ノ瀬なのか高島なのか…。それであなたに聞いたのよ。生年月日もはっきりしなくて。お父さん、昔ナツキ君は記憶喪失になった事は?」