「私ね、男の人の手、て好き。」

「?」

「だってね、大きくて逞しくて安心するの。この手で守られてるんだって思えるから。ううん。ナツキの手だからそう思うのかも。」

「だったら俺はユキの手、大好きだ。白くて柔らかくて暖かい。」

「お互い持ってないものが欲しくなるのかな。」

「…あれ。雨だ。」




「雨が降るなんて天気予報では言ってなかったのに…うひゃー冷てえ。どっかで雨宿りして行こう。」

でもこの辺りは喫茶店もファミレスもファストフードのお店もない。あるのは小さな工場が建ち並んでるだけ。

「しゃーねーな。軒下でちょっと小降りになるの待つか。」

15分位は待っただろうか。一向に小降りにはならず、土砂降りになってしまった。

二人でジャージを被ると「走るぞ。」とナツキが私の手を引いた。

バシャバシャと二人の足音だけが響いた。