自分の言葉を受け止めてもらえた事が嬉しくて、ベッドの傍まで行くとそっと抱き締めた。

「10年もの間、俺を育ててくれてありがとう。母さんと父さんがいてくれたから、生きて来られた。俺がもっと早く心を開いてれば、ここまで母さんを追い込まなかったかもしれない。今まで…ごめん。だから、早く元気になって。父さんも母さんがいなくて寂しいってさ。みんな待ってるから。」

抱いていた体を離すと、母さんは大粒の涙をポロポロと溢して、俺の目を見つめた。涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔だったけど、今までのような生気のない瞳ではなかった。生きたいという気持ちのこもった力強い瞳だった。

涙を流した事で感情を表に出す事ができた。もう大丈夫だ。これからはきっと良くなると確信した。




そして最後に高島の両親と、一ノ瀬の父さんが会う日がやって来た。