これは、お節介な田舎者の少女と無気力な都会少年との間に芽生えた、恋に似た感情の物語である。
















春が終わり、夏が来ました。
私、夢乃-ユメノ-は生まれてこの方18年間地元である山田舎から出た事がありませんでした。
それを聞いた友達は私に精一杯のオシャレをさせて、強引に都会へ連れ出したのです。


「ほら、ここが東京だよ」
「はぁ……東京は人多いねぇ。疲れるわねぇ」
「お願いだから、その話し方止めて。恥ずかしいじやない」
「何がね! あんたも昔はこう話してたけん。都会なんぞに影響されちょって!」


私の話し方は、極度に訛りが激しい祖母と元祖九州男児である祖父の影響が強い。
小さい時や田舎にいる時はあまり気にならなかったけれど、どうやら都会ではかなり目立つらしい。
道行く人がこちらを凝視して行く。


「せっかく綺麗にしてあげたんだから、もうちょっと女の子らしくしなさいよ!」
「あんたが勝手に連れ出したんか!」


次第に口論に発展して行く私たちを避けるように人々は過ぎて行く。
田舎だったら、誰かしら間に入って止めてくれるのに、ここではそういう人はいないようだ。
少し、寂しかった。


「もう夢乃なんて知らない!」
「ちょっ……」


ついに友達は走りだし、私は見知らぬ都会の地に置き去りにされてしまったのだ。
これはまさしく。


「ピンチ……でしょ」