例年と変わらない花畑に少女――レナは立っていた

田舎の祖父母の家に行くまでの道にある、森まで続く花畑

普段だったら通るだけの道に立ち尽くすのもわけがある


――――もう、離婚よ!!

――――ああ、望む所だ。お前なんかと結婚するんじゃなかった…この詐欺師め!

――――行きましょう、レナ。あんな人の元にいたら…考えるだけで恐ろしい!


「はぁ……」


少し大きめのため息が出るのも無理はない。両親の勝手な都合で数回しかあったことのない祖父母の家で暮らすことになったのだから

厳しいわけではない。むしろ優しい

だけど、それと引き換えに友達も、好きな人とも別れることになってしまったのが残念でたまらなかった



「ホラ、あの子でしょ?浮気された奥さんの娘って」

田んぼで作業してた中年らしい女性の声で、意識を現実に戻す

「田舎離れしてるってのかな、田舎に暮らすならそれらしくして欲しいよ」

其の隣にいた―――どうやら夫らしい男も口を開いた

「みてみて、あのケバケバしい化粧。誰に見せるのかしら。
私の頃はすっぴんが勝負だったのにね~」

「色気だけで男を落としたから別かれることになったんだろう。
昔からあの家は世間離れしてたがまさかココまでとは…」

田舎ならではの差別に頭を悩ませている

あと少しで学校も卒業だから、制服も前の学校のまま

中のいい人間などいなかった

「あの花きれい…」

導かれるように、この先にあるものを知っているように

花畑の奥―――森へと入っていく