注文したコーヒーとビールが運ばれ、我々はそれぞれを受け取る。
神様は両手で大事そうにカップを持ち、コーヒーをすすった。僕もビールを飲む。
神様はようやく口を開いた。

「あぁ、その話ねぇ…。それは私に聞かれても、実のところよく分からんのだよ。人々がどっちの人間なのかは分かるんだがね」

神様は髭を触りながら煙草をふかす。

「どういう事ですか?」僕はよく分からない、という表情を浮かべた。だってあなたは神様だろう?

「例えば、あそこで居眠りをしているサラリーマンは幸せになることを許されているが、CLASSYを読み耽っているあの女性は許されていない。恐らくこれから手に入れるであろう彼女の服は、職場の女の子と被ってしまい、しかもその日の夜に彼女は袖口にソースを付けてしまうだろう。かわいそうだが、これは仕方の無いことなんだ」

神様はコーヒーにかなりの量のミルクを追加し、また一口飲んだ。どうやらここのコーヒーは不味いらしい。

「とにかくそういったことは私にも分かるんだが、それ以上の事となると私にもよく分からないんだ。それは私の管理する仕事の範囲ではない。何しろ上が決めることだからね」

神様はおどけるように困った表情をして見せた。