機械仕掛けの冒険者たち

しばらくの間、神様と僕はお互い無言で飲んでいた。神様はオムレツの皿を名残惜しそうに見つめながら飲み、僕はシーバスリーガルの味を確かめるようにして飲む。この味だけは真実であることを確かめながら。

「多分、君には納得してもらえないと思うが、そういう事なんですな。他に質問が無ければ…」

神様はそう言うとセブンスターを胸ポケットにしまい込んだ。僕もこれ以上質問する事はもう無かった。

我々が席を立つと、突然『あっ・・・』という声が聞こえた。その声はカウンターに座って『CLASSY』を読んでいた女性客のものだった。
我々はそちらを見ると、女性客はモンブランのマロン・クリームを袖に付けてしまったらしく、慌ててハンカチで拭いていた。

神様は僕の顔を見ると

「・・・まぁ、我々神にだって『イレギュラー』ってもんはあるさ」

と言って、また奇妙な笑い方で笑った。「だから微調整が必要なんですな」


神様はバツが悪そうに「ここは私が払うよ」と言って、財布からアメリカン・エキスプレスカードを取り出し、店員に渡した。
悪いので僕もお金を出そうとしたら

「気にすることは無いんだよ。長い話に付き合わせてしまったからね」

と言って、僕の肩を軽くポンと叩いた。僕は礼を言った。

しかし店員が困った表情を見せ、我々を見つめた。
この店はカード決済が出来なかった。

神様の僕の肩を叩いた手が止まった。