妄想彼氏

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そして、待ちに待った花火大会当日。

私と水季は近くのコンビニで待ち合わせをした。

「利緒〜」

「よぉ〜水季ぃ」

「んじゃ行こうぜ」

私の隣の人めちゃくちゃテンション高いんだけど。

はぁ…祭だからこのあたりは人が少ないと思ったんだけど…やっぱ多いな…。

「本っ当お前って可愛いよな」

そう言い水季は私の手を握った。

私の顔はみるみるうちに赤くなった。

駄目だ…何故か水季の行動、言葉に反応してしまう。

水季があんなとこでキスとかするからっ!

変に意識しちゃうじゃんか…。

パシャ

「イエーイ、利緒の照れた顔ゲット♪」

「なっ何してんのよ!」

「待ち受けにしてあげる」

私ははぁ、と溜め息を漏らし水季の前を歩いた。と。

「あれ、利緒?」

そこにいたのは弥生と一人の男。

「よっ」

藤坂君だ。

「今行くと…ぐふっ」

今行くとこ?と聞こうとしたが、急激に感じた背中の重み。

しかも何故か私は"それ"に首を絞められているような感覚。

「ギブッギブだから!」

「アハハっ」

その"それ"の正体は、まさかの…いや当然の水季。

そして私が水季の腕をペチペチと叩くと腕の力を弱めてくれた。

「相変わらずラブ×2だね」

弥生が私達を見て笑いながら言った。

「そんなことないよ…」

「利緒ぉ早く行こうぜぇ」

「はいはい、じゃあね」

「うん」

私が歩こうとしたら背中の重みは一気に消えた。

この時私は普通に歩くという事がどれだけ幸せかを実感した。

「利緒っちょっと待っててね」

そう言って水季は藤坂君のほうへと行った。