『か、可愛くないし!』
あたしの声は辺りによく響いて、そのあと急いで乗って走らせたバイクの音も響いていた。
蓮は突然帰ろうとするあたしを見て、
『あ、逃げんのかよ!』と言ってたけど、あたしは聞こえないフリをして家に帰ってきた。
だってあれ以上あの場にいたら、確実に蓮のペースに流されてた。
ていうか、あたしもあたしで何をちょっと本気にしちゃってんだろ。
あの男のことだから、可愛くない女の子に可愛いって言うのなんか日常のようなものだろうし。
なのにあたしは…………蓮の甘い声とその時の顔が忘れられないでいる。
もう忘れよう。
さっきのことはキレイさっぱり忘れることにしよう。
そのためにも、バイトで疲れたからシャワーだけでも浴びて心も体もすっきりしようと思い、お風呂場へと向かった。
.



