今から兄弟ケンカを始めていいくらいの心の準備はできていたのに―――……
まさかの邪魔者が現れた。
邪魔者っていっても、廊下を大雅と啓介が歩いてきただけなんだけど。
でも、
「朔、先行ってんぞ。俺の愛しのメロンパンちゃんががなくなっちまう」
「いや、もう用事済んだ。……じゃ、もう忘れんじゃねぇぞ、タコ」
タコっ?!!
大雅のふざけた言葉で朔はこの場を去ろうとするし、しまいには、あたしのことを今度はタコ呼ばわり。
バカの次はタコ?!!
「あたしがタコだったら、双子の朔だってタコなんだからね!このバカタコ!」
朔の背中にそう叫んだあたしの声はうるさい廊下ではかき消され、朔の耳に届いたどうかは分からない。
だけど、自分でも何て低レベルな言い合いをしてるんだろうと恥ずかしくなって、
聞こえてないことを祈った。
.



