あまりに蓮が近くにいるから、
邪魔かな、と思って退くためにドアを開けた。
それは特に気を使ったわけじゃなくて、自然ととった行動だった。
だけどその行動が、史上最悪な事件の発端だったなんて―――……。
その事件はすぐに起きた。
洗面所の足元には、マットがひかれていて、マット自体が滑らないように滑り止めがついている。
だから本来はそのマットで滑ることはない。
「きゃっ……」
それなのに、あたしが足を踏み入れようとした瞬間、足元がズルッと滑って………
「おいっ…」
スローモーションで自分が転びそうになってるんだと………嫌でも分かる。
いや、もう転ぶんだ……。
あぁ……あたしどうなっちゃうんだろう。
このまま転んで顔面打ち付けて、顔の原型なくなっちゃうのかな。
もっと青春したかったなぁ……。
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