そういえば彼女がいるって言ってた。
ってことは――…。
「何が聞きたい?」
「え?」
「澪が聞きたいこと何でも答えるから言って」
「でも……」
「澪になら話せる。つーか、澪だけには知っててほしい」
蓮は立ち上がり、あたしの横に腰を下ろした。
そして、静かな部屋の中で………あたしは口を開いた。
「お母さん……は?」
「母親は俺が産まれた時に俺と親父を捨てたから顔は知らねぇ」
「……」
「俺が5歳くらいの時に親父が再婚して新しい母親ができたけど、2年で離婚した」
「……今…は…?」
「今はいねぇから親父と2人。って言っても、親父も女んとこにいるから結局1人みたいなもんだけどな」
まさか、蓮の過去がそんなに重いものとは思わなかった。
聞いたくせに………何も言えなくて悔しかった。
頷くこともできなかった。
ただ黙ってるだけで――…瞬きすら忘れていた。
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