「な、なに?」
「……」
いきなりこんなことしといて、こんなに顔近くさせといて、無視ですかっ!
かと思ったら、一瞬触れるだけのキスをされた。
「っ!」
「間抜けな顔」
挙げ句の果てにはそんなこと言われる始末。
あたしはまともに蓮の顔を見れずに俯く。
「……うるさい、って言わねぇんだ?」
「だって…」
「なんだよ」
「蓮こそ、何で不機嫌なのよ」
原因があたしのせいにしろじゃないにしろ、
不機嫌でいられたらモヤモヤして気持ち悪い。
だから理由だけでも知りたいと思うのは、恋人として当たり前のことだと思う。
それなのに蓮は、
「不機嫌?俺が?」
「うん」
とぼけてきやがる。
いや十分不機嫌だったからね?
だって今だって………と、蓮の顔を見ると、どうやらもう機嫌は直ったらしい。
見上げたそこには、いつも通りムカつくくらいかっこいい顔があった。
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