「でも結局は泊まらせなかったんだけどな」
「えっ？」
聞き捨てならない言葉が聞こえ、無意識のうちに声を発してしまった。
「だって昨日蓮は家に帰ったじゃん。それに泊まらなきゃいけない事情があるなら……」
「事情も何も、とっくに麻奈美には居場所ができてて、蓮を頼る必要なんかなかったんだよ」
「……どういう意味？」
「蓮は祥平んとこに麻奈美を連れてったんだよ。麻奈美と祥平は両思いだけど付き合ってねぇだけで、居場所は祥平ん家らしいから」
頭の悪いあたしは拓斗の説明を聞いてもちんぷんかんぷんで、それを見抜いた啓介が後から分かりやすく話してくれた。
つまり、啓介が聞いた麻奈美の『泊まっていい？』という言葉は本物で、
蓮が泊まらせようとしてたのも本当だったらしい。
あたしが蓮を問い詰めてケンカして、あたしが部屋に閉じこもった時までは、まだ泊まらせようと思ってたみたいだって。
でも、あたしが追い返したあとに蓮が家に帰ったのは、あたしのためだ、と啓介は言った。
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