蓮が来る前までは、あたしが後退りするほど勢いがあったのに、
蓮が来た途端、麻奈美は静かになった。
それに比べて蓮は……。
「つーか、俺もう麻奈美が知ってるようなやつじゃねぇから」
「……」
「澪以外の女に興味ねぇし、他の女と関わるつもりもねぇから」
冷たくそういい放つ。
それなのに、あたしはこんな状況でも蓮のその言葉に胸が高鳴り、
蓮の言葉で自分の気持ちが左右されることが悔しかった。
すれ違っていても、
ムカついていても、
信じれなくなっていても、
やっぱりこうして蓮の言葉を聞くだけで、蓮に会うだけでホッとしてしまう。
全てのわだかまりがなくなったわけではないけど、涙も自然と出なくなっていた。
白馬に乗った王子様が迎えに来るとか――…あたしはそんなこと言う柄じゃなかったけど。
今は素直にそう思う。
白馬に乗った王子様が助けに来てくれたんだ、と。
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