タバコを取られるって分かったあたしは、タバコを持つ手を伸ばして取られないようにした。
「そんな簡単に渡さないしっ」
得意気にそう言ったけど、
ふと視線を上げると、目の前には蓮の顔があって。
それがあまりにも近くて――…ドキッとした瞬間に視線を逸らした。
「タバコ」
「や、やだ」
「返してほしいんだけど、澪ちゃん」
蓮に“澪ちゃん”って呼ばれると、どうも胸がキュンってなって、言うことを聞いてしまいそうになる。
つまり、“澪ちゃん”に弱い。
「返す気はねぇと」
「も、もちろん」
「ふーん」
すると、蓮はまた何かを企んでるような顔で笑った。
「じゃあ、もう知らねぇからな」
甘く低い声でそう言った蓮は近付いてきて………
「……!」
あたしの唇に、蓮の唇が………ゆっくりと、触れた。
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