あたしはその男にゆっくりと近づいた。
だけど近づくにつれて、その男はなんだか話をしてるようだった。
それは決して独り言なんかじゃなく、どうやら電話をしているようだった。
あたしはその男の前を通り過ぎた。
すると、自然とその男の話し声が耳に入った。
「だから今は無理だって。は?今から?行けるわけねぇじゃん。りえの家知らねぇし」
「マジで無理なんだって。明日?明日も無理。何でって、さやちゃんとデートなんだよ」
「ちげぇよ、そのさやかじゃねぇし。つーかりえの知らねぇやつだよ。とりあえず今日も明日も無理だから。また連絡して?じゃーな」
早い口調で話すその男は、すぐに話を終え電話を切ったみたいだった。
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