それからしばらくの間、あたしは蓮にお姫様抱っこされたままギャーギャー騒いでた。
蓮はどんどん奥へと進んでってしまって、
途中で騒ぐのは体力の無駄だと分かったから止めた。
「急に大人しくなったな」
蓮は勝ち誇ったような顔をした。
「しょ、しょうがないじゃん。溺れたくないし」
今、唯一頼れる人が蓮しかいないから大人しくしてるだけだし。
くっつきたくないけど、落ちたくないから蓮の首に腕回してるだけだし。
これからまだまだ遊ぶから、そのために体力温存してるだけだし!
……だなんて、
可愛くないことしか言えないあたしを、蓮はどう思ってるんだろう――…って、
無意識のうちに考えてる自分がいた。
「澪って可愛いな」
本人の蓮は、更にあたしのことを狂わせる。
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