「あのさ……」


――ビクッ


「……そんなに怯えるなよ。」


「えっ…」


怯えてるわけじゃない。



そう思ってみたけど、やっぱりそう思いたいだけなのかもしれない……


「矢吹からファイル見ていいよ。」


“さくら”


とは呼ばないその声



当たり前、か……



「いいよ。あたしが後で読むから」


「いいから。俺の後に読んでたら帰りが遅くなるだろ。」


「大丈夫だって。少しくらい遅くなっても」



本当は早くここを出たかった


でも……


「ほら、先に読めよ」


「いい!」



「……ったく。相変わらずさくらは頑固すぎだ…」



「っ……」


“さくら”


懐かしい声が耳に届いた



「って、もうさくらなんて呼んじゃダメか……」


ねぇ―…なんでそんなこと言うの?




なんで今さらそんなことを言うのよ……