「え!ちょっと沙紀、なんで泣くんだよ!」
「アタシたち、なんか悪いこと言った…?!」
2人がおどおどと私に尋ねてくる。
クラスの皆も私が泣いてるのが物珍しいのか、じっとこっちを見てきた。
「っ…2人のせいじゃないから。…うれしくて泣いてたの」
流しきった涙を私は拭うと、2人にニッコリと笑って見せた。
すると、2人は口をギュッと結んで、頬をピンクに染めた。
ん…?
どうして?
「あ、2人とも…チャイム鳴るから…席、座ろう?」
「だな」
「………」
私はそう言って自分の席につく。
律ちゃんと美羽ちゃんも席についたみたい。
だけど……
「おら、お前どけ」
「ちょっとどっか行ってくんない?」
私の前後の席の子に、脅しのように頼み事をしていた律ちゃんと美羽ちゃん。
しかも、律ちゃんが両肩に抱え上げているのは2つの机。
「ちょっ…何してるの…?」
私が話しかけた時、律ちゃんは美羽ちゃんに1つの机を渡していた。
そして、私の前の席の子が机を退けるとに律、ちゃんはそこに机を置いた。
同じように、後ろには美羽ちゃんが机を置いて…。
『よろしくな』
まるで双子のように息のあった声で2人に言われた。
前には律ちゃんがいて、後ろには美羽ちゃんがいて…。
「よろしく…ね」
その時、私が笑ったのを見て、誰かが陰で舌打ちしたのをまだ私は知らなかった。

