『1992年3月』

「…ねぇ、お母さん返してよ…お母さん返してよ!…ねぇ、おじさん!僕たちのお母さん返してよ…」


『2007年3月』

「ジリリリリ!!」

時計の針が朝の7時を指しアラームが、けたたましく部屋中に鳴り響いた。

暦の上では春だが、まだ朝方は冬の寒さが残っており男は布団から片手だけをヒョイと出し手探りでアラームを止めた。

眠い目を擦りながら起き上がる。

「さむっ…!!」

とっさに身震いしながら独り言を言う男…。
男は布団から出て体を震わせながらコーヒーメーカーに水を注ぎ煎ったコーヒーを1口すすりオーディオの電源をつけ、お気に入りの曲を流した。

部屋はほろ苦い香りで満たされていた。