「…だが、その取り引きの事が何者かによって警察に漏れてしまっていて私を含む暴力団幹部が現行犯で逮捕されました。…そして、次の日…私は朝刊を見て驚きと同時に怒りを覚えた。闇金の取り引きの主犯が私になっていたんだ。他の人間はまったく関与してなく私個人の仕業にされていた…懲役自体は短かったものの出所した時には家族も職も財産も失っていた…もちろん全部、林の仕業だった。妻と娘は無理心中ということにしてヤクザの手によって消されていた。それだけでなく私と関わって来た人間も金で私との縁を完全に切られていた。…これは全て一緒に捕まった暴力団幹部が私が何も知らないのは不憫だということで教えてくれた…そんな私は林の中では死んだと思えていたんだろうな…私がホームレスになって奴を訴えると手紙を送りつけるまでは…」

「…なるほど…その手紙によって、あなたの生存を確認し、なおかつ過去からの悪業があなたから大々的に漏れることを恐れた林は完全に無関係な人間を巻き込みながらあなたを消す事を思いついたというわけか…まるで人の命をゲーム感覚の様に弄びながら…」

「…やはり、最近頻繁に起きていたホームレス暴行事件は私と関連性があったんだな…」

「分かっていたんですか?」

「…いえ…ただ、林に手紙を出してから起き始めたもので…」

「…なるほど…」

ジョーは稲本から林について話を聞き自身の持つワゴンへと向かわせた。

…そしてジョーは…

「…ピッピッピッ…ピッピッピッピッピッピッピッピッ…プルルルル…プルルルル…」

「もしもし…500で頼む…」

「…プツッ…ツーツーツー…」

陽はとうに暮れて夜の8時を回っていた。