「…少しばかりオレと稲本さんが一緒に歩いてると違和感を感じちゃいますね。」

「ハハハ…まったく、その通りだ…こんなみすぼらしい恰好をした男がアンタみたいにビシッとスーツを着込んだ男と歩いていたらミスマッチもいいところだろう。」

ジョーは稲本と何気ない会話から始めた。そして、ジョーは一刻も早く稲本に自分の置かれている状況を理解させる為に本題へと会話を変えた…

「…稲本さん…これから話す事は全て小声でお願いします…単刀直入に言います…実はあなたは何者かに命を狙われています…しかも今夜、その何者かがあなたの元へ来ます。」

「！！！」

「…でも大丈夫…まだこんなに変わり果てたあなたが稲本数人だと向こうは分かってないはずだ。…多分この辺りにいることまでは分かったのだろうが詳しくは分かってはいない…なにせ、過去のあなたしか知らないんだからな。大概の人間は…」

「…そうか…私は、やはり消される運命にあるんだな…まあ、金に溺れた汚い人間の末路としては当たり前なんだろうがな…」

稲本は自分の過去を振り返るように呟いた。