僕は家族に連れられて総合病院へ向かった。

いろいろ検査をいっぱいされて、長い間待たされた。

僕はその間も彩のことだけを考えていた。

彩を早く探し出さなきゃ…。

彩が、何も言わずいなくなるはずなんてない。

このときはまだ、僕の症状がこんなひどいものなんて知らなかったから……。

「笹本さんー、来てください」

看護師の声とともに、我に返る。

「竜也は大丈夫なんでしょうか?」

お袋が恐る恐る聞く。

「んー…。竜也君も高校生で大人ですし、隠しても仕方ないと思うんで言いますね」

「……どういうことですか?」

今度は父親が聞く。

僕は何の話をしているかも分からなかった。

そして医者が口を開く。





「すい臓癌です。」




「………はい?」

あまりにも医者がサラリと言うので冗談じゃないかと思った。

「ええ。末期です。余命半年ほどですね」




『余命、半年』





感情というものがないのか、この人は。

僕はもうわけが分からなかった。

あまりにも軽すぎて悲しむに悲しめなかったし、泣くに泣けなかった。

さすがにこの瞬間だけは彩ではなく、自分を心配した。

「……冗談でしょう?」

僕は無意識に言葉を発していた。

「末期なのでもう手術はできません。今すぐ入院して余命を少しでも長くするしか方法がないでしょう」

その言葉を聞いたとたん、母親がわっと泣き出した。

父親は怒り狂い医者の胸ぐらを掴む。

僕はただぼうっと放心状態に陥っていた。