初老の男性たちが去ったあと、私は鹿のかぶりものを被り再び歩きだすのだが、
先ほどのことについて他の二人はとやかく言わなかった。
強い風が吹いても、
とくに話題にしないような、なんとも不思議な感じだ。そんなふうに人と接する人とは、あまり面識がないのでもの珍しい。

騒ぎたてる人のほうが異常なのか。それともしょっちゅうなので慣れてしまったのか。

「え…あの」
Dが、私の手を握る。「その、君、震えてて…きみのことが心配だったから…」

自分では気付かなかったが、
さっきのことで、
震えていたのだ。
「でも、男同士でこんなことは…」

私が照れ臭そうにいうと、

「別にへんじゃない…昨日だって、すぐに駆けつけたかったんだ…」


「え?それって……」
何も考えられなかった