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中は、仕切りの付いた長テーブルの上に黒電話がたくさん置かれていて、
けたたましく鳴っていた。これほどうるさくて、よく平然としていられる。
奥の広間には、電話を修理?作っているのかわからないが、それらしい服を
きて作業をしていた。
「あの、ずっと電話がなりやまなようですが……どうして出ないのですか」
Aなら、顔を真っ赤にしてとっちめるところだけれど、私はできない。
だからなめられるのだろう。
「え?……?」
「もう一時間はずっとなりっぱなしなんですよ」


彼は戸惑う様子だった。ちょっとイラついた。

「……それは、あなた宛の電話ですよ。
ここの黒電話は、用がある人にしか聞こえないんです」

「え? なにいってるんですか? 別に私は怒鳴り
にきたわけじゃないんですよ!」

なんて下手な言い訳なんだ……でも……

「……そんなつもりはないんです……出てみてください……
出るまでずっと鳴り続けますよ……」

この表情は、またかといった感じで本当に困り果てていた。
とぼけているようには見えない。
もしかしたら、本当のことなのかもしれない。ふぅと一息ついて、
私は鳴っている黒電話の受話器を取った。

「はい……」

「また、あの場所にいってきた。嫌なのに、行かずにはいられなくなる。
不安と恐怖が、私を拘束するのだ。

あの場所は、ひどく閉鎖的で、複数の人間の脳内の中が全て現実になる場所。
互いに、憎みあい、頑なで、自らの想像を超える存在を排除しようとする。

なぜ、あの場所に行こうと思ったのだろう。それは、
彼らが他者と共存しているにもかかわらず、得体の知れない行動で
我々を苦しめるからで、我々に、寄生して自分たちと同じ行動を強いるからだ。
それを阻止しなければいけない……例えこの命を犠牲にしてでも……」

「……」

同じだ。管理室とかかってきたいたずら電話とにたようなもの。
何がいいたいのだろう?

「君が勤務している管理室。あそこのソファの下に隠し階段がある……
いってみるといい……」
そういい残して、一方的にきれた。